車椅子
犬の散歩のとき、時々出会う人が居る。年齢は80歳前後。犬は足がもう立てなくて、車椅子に乗せてもらい、外に連れ出してもらってる。
それがいつの日か、おじいさんは空っぽの車椅子を押していた。座席には芝犬の写真が。
あ、亡くなったんだ!と思った。
話しかけると、おじいさんは言った。
今まで、僕が犬を散歩させてましたが、僕も足腰が弱り、犬が亡くなった後も、車椅子を押さないと歩けなくて、今では亡くなった犬に僕の方が歩かせてもらっているんです。と。
涙が溢れた。
何ヶ月か後に。公園でその方を見かけた。車椅子から写真を取り出し、滑り台の上に写真を置き、自分も階段を登り、ペタンと座って写真を膝に置いてうつむいてる。
私は声をかけた。
寂しいの?と。
はい。寂しくてたまらない。写経を始めたんですが、筆が進まないのです。犬を思って、時々恥ずかしいですが、泣くことがあります。と、涙を流される。
私の両目から大量の水分が溢れ出して前がみえ
ない。
しばらくして、風邪ひきますよ、と言い残し犬の散歩を再開した。
後から、家を聞いとけばよかった。何か私に出来ることがあればと、何度も思い返し、朝晩散歩するも会えなかった。
それが大晦日の夜、主人と家の前にいると、その方が車椅子を押して前を通った!嬉しい!会えた!!
家がどこにあるのかも聞いた。お名前も。
僕は何処で貴方にお世話になりましたか?とキョトンとされてる。公園の滑り台で、、と説明すると、あぁ!と、頭をぽりぽり。
果物か、煮物を、お正月があけたら届けてみようと、考えている。
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